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2000年度横浜市教育予算編成に関する要求書

1999年11月18日

横浜市市長             
     高秀 秀信 様

横浜市教育委員会
  教育長  太田 昇 

子ども・教育・くらしを守る横浜教職員の会
会長  土志田 

「子どもの権利条約」を反映した2000年度横浜市教育予算編成に関する要求書

は じ め に

 戦後の半世紀、日本は、平和憲法のもとに教育基本法に基づいて、子どもたちを主人公に、二度と再び戦争をしないことを誓い、また、個々人を権利主体として正しい判断のすることができるように、日々、教育が行われてきました。教育行政は、戦前の文部省・内務省による国家主義的な「個」より「国家」を優先する教育に対して、「個」を大切にする民主主義教育の実現をめざして、教育の施設設備の充実・教職員の配置の充実など教育条件の整備をしてきました。しかし、現実には、子どもや親の要求に十分に応えていないために、市民の間に数多くの要求が生まれてきます。

 しかしながら、この50年間、基本は憲法・教育基本法に基づきながら、自民党政治やそれにつながる財界一部勢力の要求等により、憲法・教育基本法はないがしろにされ、紆余曲折があって、学校教育は制度的にも内容的にも子どもたちを苦しめるものとなってきました。いわゆる管理主義教育のもとでの詰め込み教育・競争主義教育といわれるものです。そして、地方教育行政は戦前をひきずったまま、文部省に従って教育を推進してきています。それと同様の教育情況はこの横浜にもあります。

 こうした問題の第一の責任は政府にあります。憲法・教育基本法に反した教育行政をやってきたため、政府は、国連への政府報告に対し、国連の「子どもの権利委員会」から、実に24項目にわたる厳しい「勧告と提案」を受ける結果となりました。

 「子どもの権利条約」のもっとも大事なことは、子どもを権利主体として認めることであり、その上にたって、子どもたちに「最善の利益」をもたらすことです。そのような教育政策の実現です。それはまた、子どもの意見表明権を認め、子どもたちを社会の一員として正しく位置づける教育政策の策定であり、教育環境の整備であり、子どもを主人公とする学校教育の実現です。勧告の中で最も厳しいものは、競争主義教育、詰め込み教育をやめ、それによる子どもたちのストレスの解消に努力することということです。つまり、競争主義教育・管理主義教育に終止符をうつことを勧告しています。

 次期学習指導要領も、完全五日制の中での教育の大綱を決めたものであるにもかかわらず、内容の過重を含め、競争主義教育の解決の方向になっていません。横浜市教育委員会は、「ゆめはま教育プラン」「新よこはま教育プラン」を策定し、各学校にその実現を呼びかけていますが、各学校が、その教育課程作成にあたって、父母・地域、子どもたちの願いをまとめ、教職員と一体となって、自主的な作成がなされるよう、予算措置をすることが大事です。特に人的配置を可能にする予算措置をすることは、これらの方策を実現するために欠かせないことです。こうした各学校の動きに対して、行政として圧力を加えて教職員の自主性を損ねないようにすることも横浜市教育委員会の大事な仕事です。

 私たち横浜教職員の会は日頃より子ども・教育を守り、教育活動に専念し、大きな努力を払っている教職員の組織として、以上の立場にたって教育から発信する民主主義社会建設を基本に、いかなる政治権力の介入を排除し、教育の論理にしたがって横浜の子どもたちすべてが、人間として生き生きと生活ができるように、以下の各項目・内容の実現のために、教育予算を大幅に増額することを要求するものです。

要求項目
1)「子どもの権利条約」のそのものの実現を巡る要求

@「子どもの権利条約」を市民に徹底するための方策として、市民向けパンフレットをつ くり、市民の理解を深めるよう、地方自治体としての責任をはたすこと。あわせて、憲 法・教育基本法の理解を深めるようにすること。

A情況の変化があるので、「子どもの権利条約」解説パンフの改訂版を毎年つくり、時々 刻々の前進的な変化をパンフに反映させ、子どもたちの理解を一層深めること。

B子どもたちに直接かかわる教職員をはじめ、保育園保母、学童保育の指導者などのため の「子どもの権利条約」の研修を実施し、その理解を深め、各学校・幼稚園・保育園・ 学童保育所等で実効あるものとすること。

C「子どもの権利条約」を横浜市に生かしていくために、乳幼児から高校生までの子ども たちのための総合的政策を策定する必要があります。教育委員会が提唱して、他の部局 (市民局・福祉局など)と協力して横断的な「子ども委員会」(仮称)を設置し、子ど ものための総合政策をうちたてること。これは、「ゆめはま2010プラン」とは違っ た、子どもたちの地域での生活環境全般に及ぶように、その支援活動ができるセンター と人員の配置などについて政策をたて、予算をつけ、実行すること。

D「子どもの権利条約」を横浜の子どもたちに直接的な利益あるものとするために、「横 浜子ども権利条例」(仮称)を策定するための準備に入ること。

E子どもたちが再び戦争の惨禍にまきこまれないように、市民全員の平和への意志を明ら かにするために、横浜大空襲の5月29日を「横浜平和の日」として制定すること。
F歴史の記録として、横浜市内各地に残っている戦争遺跡を保存し、表示板を設置するこ と。また、平和のための戦争遺跡マップを作成し、児童・生徒に配布すること。

G平和のために、諸物品・資料の収集と保存のための平和記念館を設置すること。そして 戦争関係物を常時展示し、諸学校の平和教育のための資料を貸し出し、提供できるよう にして、学校における平和教育の一層の充実に努力すること。


2)子どもたちに『最善の利益』をもたらす施策をとること

その@ 30人以下学級を実現のために努力すること

@子どもたちの「最善の利益」のための30人以下学級の実現をめざし、1998年9月 25日の横浜市議会での全員一致による「30人以下学級の実現を求める意見書」に基 づいて学級編制に関する諸法規の改正などを引き続き、国に対して強く要請すること。

A公立義務教育の教職員配置改善の「第7次改善計画」の早急の策定を国に要請し、30 人以下学級実現と教職員定数の配当基準の大幅な改善を要請すること。

B義務教育に対する国庫負担制度の一切の削減に反対し、その拡充を国に要請すること。 その立場から、学校事務職員・学校栄養職員の給与の国庫負担制度の堅持を引き続き国 に要請すること。

C学級定数と教職員の配当基準は、現在は法律に基づいていますが、30人学級の実現は いまでは国民の声、市民の声であり、横浜市の子どもたちのために、それに近づくよう に横浜市としても努力すべきです。毎年、横浜市教育委員会のこの項目への回答は、「 県・国に働きかける」「市予算では困難」ということですが、中教審答申の学級編制の 部分を積極的に生かし、県教委の不足を補って、市予算で、39名以上の学級は分割す るなど、39名以上の学級(1年生は5による)を全廃し、子どもたちが安心した学校 生活を送れるようにすること。横浜の子どもたちの生活・学習・権利に責任をもつ横浜 市教育委員会として、その実現を率先して行なうこと。

D上記2の中で、特に、6年生について現在県予算で実施しているように、児童・生徒数 が減少しても前年度と同数の学級として、子どもたちが在学中を通して安心して学校生 活ができるように、全学年で学級数を減らさなくともいいように、神奈川県に強くその 実現を迫ること。また、県予算による実現以前でも子どもたちのために、市予算で教員 を配置すること。特に小学校1年生には30人以上学級を2000年度にはつくらない ように、横浜市として努力すること。

E定数内の臨時的任用職員(教員)が300名をこえていることは、異常であり、学級数 の把握に失敗したといえる失政といえます。少なくとも100名以下に押さえるように 学級数確定期に各学校長とよく相談していくこと。その結果学級数の減があっても市教 委が責任をもって対処し、報告の学級数で教職員を配当すること。また、そのために採 用した臨時的任用職員の年度途中の正規採用等の方法を考えること。

F養護教諭、学校事務職員の数は把握しやすいので、定数内の臨時的任用職員を完全にな くすこと。

G「いじめ」「不登校」など、子どもたちの悩みなどに応えるため、すべての学校に複数 の養護教諭の配置を市教委の責任を含め、実施すること。

H12学級以上のすべての学校に学校事務職員を複数配置すること。

I小学校専科教員を各校にあと1名配置するために、横浜市教育委員会として非常勤講師 を採用すること。

J小学校の小規模校に配置している補助員を、11学級以下を改定し、学年に関係なく単 学年のある学校には、12学級以上の学校にも配置できるようにすること。

K中学校の免許教科外教科の解消のための教員の配置は引き続き行なうこと。

L障害児学級の学級規模を6名以下とし、1学級2名の教員を配当すること。また、小学 校での学級編制については低学年・高学年などの2学級以上の学級編制とすること。以 上のことを国及び県に強く働きかけること。それまでの間、横浜市として、それに見合 う教員を配置すること。

M障害児学級に重度障害児が在籍した場合には市の責任で教員を増員すること。

N普通学級に障害児が在籍した場合には、その障害の実態に応じて市の責任で教員を加配 すること。その実現までの間、市の責任で非常勤講師を確保し、配当すること。また、 現在普通学級に配置されている介助員の日数を増やすこと。

O障害児学校に配置されている介助員の介助範囲を拡大し、遠足・校外学習指導にも付き 添えるように制度を改善すること。また、その待遇を改善すること。

P障害児の登下校の介助員は、緊急の場合でも対応できるように市教委の責任で整備する こと。

Q障害の多様化・重度化を考慮して、学校の施設・設備の充実をはかること。

R養護学校の大規模化解消と地域性のある学校づくりをすすめること。当面、横浜市の南 部方面に高等部をもつ肢体不自由養護学校の新設を市教委の責任で実現すること。

S重度重複障害児の教育を保障するため、北綱島、新治、東俣野、中村の各養護学校に高 等部を設置すること。また、専用の体育館を設置すること。

(21)日野養護学校の校舎移転についての市教委の計画を公開し、教職員、保護者、子ども  たち、地域住民の意見を聴取し、それを尊重すること。


(22)障害児学校の児童・生徒の通学時間を短縮するために、障害児学校のスクールバスの  増車をはかること。

(23)自校内で通級している児童・生徒がいる場合、市の責任で教員を加配すること。

(24)」学校図書館に司書教諭を配置することが決まったので、国の実施に先立って、司書教  諭を確保しておく意味も含め、市の責任で試行校をつくり、配置すること。

3)子どもたちに『最善の利益』をもたらす施策をとること。
そのA施設・設備の改善、父母負担の軽減をはかること。

@新設校及び建替え期にある校舎については、「子ども達の未来を拓く学校施設−地域の 風がいきかう学校」(学校五日制時代の公立学校施設に関する調査研究協力者会議報告 文部省教育助成局 平成11年7月)に基づき、教職員、地域、子とも達の声を反映さ せて、改善された校舎を建設すること。

A学校運営費を大幅に増額して、教育活動を豊かなものにしていくこと。

B消耗品費、備品費で購入できるものを一覧表・パンフにまとめ、学校事務職員に示すと 同時に、全教職員にも示して、公費で教育を行う意義を徹底し、すべての学校で平等な 公費使用がなされるようにすること。

Cプール指導開始直前のプール清掃について、当面、異常な負担を教職員や児童にかけて いる小規模校(12学級以下)について、プール清掃を試行的に業者に委託すること。
D事務の簡素化をはかるため、児童・生徒出席簿用紙に曜日等を印刷するなどの改善をす ること。経費削減を理由に教職員に不必要な負担をかけないこと。

E次のようなものの改善を急ぐこと。

a小・中学校の体育時の更衣室、中学校の部活動時の更衣室(男女別)の設置年次計画  を公表し、各学校に提示すること。
b校庭の学校開放をしている場合には、外で使用できるトイレを早急に設置すること。

c全校に相談室を設置すること。既存のものを使用する場合は内装工事を施し、児童・  生徒が安心して来られる相談室設置のための年次計画を公表すること。
d児童・生徒が、豊かな気持ちで生活できるように、美しい環境の教室を提供するため  に、10年に1回は校舎内外の壁面の塗装工事が必要です。横浜市の塗装工事の年次  計画を公表すること。
e学童生徒用机のサイズが従来のままのため、大型化した教科書類を机上にゆったりと  置けないので、文部省も進めようようとしている机を一回り大きくする研究を始め、  改善を急ぐこと。JIS規格で定められている場合は、その変更を求めること。
f教室の児童・生徒用ロッカーを大きくして、大きくなった教具類がきちんと整頓でき  るようにすること。

F障害児学級を新規に開設する場合、施設設備費、備品費、消耗品費等の予算を十分に配 当すること。

G障害児学級と通常学級の位置が別棟になっている学校は、交流しやすい情況をつくるた めに、学校の要請に応えて改善すること。

H標準学力テスト類は全廃すること。どうしても実施する場合は、学校の必要上行なうの であって、児童・生徒がそれにより利益を得たとしても副次的であり、その費用は、公費費負担とすること。

I教育課程上必要とする高額で、短期間利用の物品、たとえば剣道着、柔道着等は学校に 備え付け、貸与すること。

J教育活動上、学校が決めて使用するもの、たとえば連絡帳(小学校)、生徒手帳(中学 校)などは、消耗品費を使用するように各学校に指導すること。

K各学校で実施している芸術鑑賞(児童・生徒数の減少により一人の負担が大きくなって 中止する学校が増加している)などについて、情操教育の重視の立場から全額または一 部を補助し、これらの行事の実施を保障すること。

L学校が計画する全校または学年(代表参加も含む)が参加する行事については、その費 用の一部または全額を公費で負担すること。

M教育課程に基づく教育活動上、必要とする諸施設の入場料・施設使用料については、児 童・生徒は参加が義務づけられるので、全額公費負担とすること。また、地域の人々が 教育に参加してくれた時の、地域協力者への謝金を予算化すること。

N中学校の部活動での運動部の公式戦、文化部の公式発表会等、運動・文化に大きな成果 をあげ、公的にも認めていることなので、それにかかる交通費(1回につき、1000 円〜2000円程度の交通費がかかる)を公費負担することで、子どもたちの活動を保 障し、横浜市の子どもたちの活動水準を引き上げること。費用の面で参加のできない生 徒が出始めています。

O部活動は教職員の大きな負担となっていることを考慮し、また、子どもたちが専門の指 導者の指導が受けられる社会教育へ移行することを前提に、当面、技術指導者や審判員 を学校の要請により依頼できるように、予算措置をすること。現在、実施されているも のは維持しながら、一層その拡大に取り組むこと。

P宿泊体験学習・自然教室について利用しやすい公的施設を更に増設し、利用しやすくす ること。また、他都市の施設でも利用できるものがあれば各学校にしらせること。その ことで、父母負担の軽減をはかること。また、看護婦や指導補助員の人件費の単価を引 き上げるなどの予算化をすること。

Q障害児の宿泊行事としても利用できるように各施設を改善すること。利用頻度の高い「 三浦ふれあいの家」は車イスの使用にも対応できるように改築または改修するように引 き続き強力に県に働きかけること。

R宿泊体験学習・自然教室などに引き続き交通費等の費用を補助すること。また、修学旅 行などにも同様の補助をおこなうこと。

S学校災害の被害児童・生徒を救うために、国に対して無過失責任の「学校災害補償法」 の制定を協力に申し入れること。また、市議会としても同趣旨の法の制定を国に対して 意見書をあげるように、要請すること。

4)子どもたちに『最善の利益』をもたらす施策をとること。
その3 子どもたちに健やかで、心豊かな知性あふれる人への成長を保障すること
@子どもを主人公・権利主体とする学校教育の実現のために、憲法・教育基本法・子ども の権利条約を基本に、教職員と保護者と子どもたちが協力できる学校づくりを推奨する こと。

A横浜市の研究協力校は、他都市の学校に比べて非常に多く、その研究発表会なども多い ようです。教員が余裕をもって児童・生徒と接することができるようにするために、研 究協力校の委嘱を極力押さえ、その発表を簡素化すること。市独自研究協力校について は全廃すること。自主的な研究発表会は自粛させること。また、これらに伴う校長の講 師依頼などの相互の交換出張をとりやめ、校長を自校の教育活動に専念させること。市 教委の昨年の回答の「教育内容・方法の充実・改善にかかわる教育水準や研究水準の維 持・向上を図る」ことについては、子ども・教職員の長時間勤務・過重負担をなくす立 場から、研究協力校のあり方を再検討すること。

B研究協力校においては、そのための繰り返しの授業研究への参加により、子どもたちの 自習時間が数十時間になることがあります。その解消のため、子どもたちの学習権の保 障の立場から、授業研究とその見学を必要最低限に押さえること。また、その研究に良 心的に関わろうとも、結果的には偏った教育となることが多く、指定以外の教科の学力 を子どもたちが身につけていないことがしばしば見られます。子どもたちの円満な成長 を害することにもなっていることを直視し、徒に研究協力校をつくり、子ども・教職員 に負担をかけないこと。

C市の研究協力校の委嘱は、各学校の総意に基づいて自主的に応募してきた学校に市教委 が依頼するというように説明しているが、実態は管理職の一方的導入であったり、校長 会等で順番として強要される中で校長の泣き落としで導入することが多く、教職員はや むをえず引き受けざるを得ないことが多々あります。横浜市の教育水準を引き上げるの は研究協力校という外向けのものではなく、校内で互いの相互批判による研修の方がは るかに優れています。その場合の講師を他に求められるように講師謝礼費を予算化する こと。

D横浜市教育委員会以外の他の部局からの各学校への研究委嘱の状態について調査し、公 表すること。その実態に基づき、他の部局と話し合ってそれらの委嘱を縮小すること。

E子どもたちと教員の余裕を保障するために、市の各種連合行事を全廃もしくは縮小する ための検討をすること。

F小・中学校の市体育大会を廃止・縮小の方向で見なおすこと。そのため、体育関係者の 意向ではなく、教職員全体の意見を聞くこと。

G小学校特殊学級・養護学校合同運動会を廃止・縮小の方向で見なおすこと。

H国連の「子どもの権利委員会」からの日本政府への勧告の大事な一つは、「極度に競争 的な教育制度によるストレスのたるの発達上の障害」の解消です。高校入試制度を中心 とした詰込み競争主義教育が学校の中でどのようになっているか、その実態を調査し、 それに基づき、そのような教育の改善をはかること。

I卒業式についてのあり方が各学校で研究工夫されてきています。それは、卒業式を最後 の授業と位置づけ、児童・生徒と教職員、保護者が一体となった創造的なとりくみとな っています。それには、形式的な卒業式という観念で、機械的に「日の丸」「君が代」 を強制するようなことをしないこと。日本国憲法が保障している子ども・保護者・教職 員の「思想・良心の自由」「内心の自由」を保障することを、第一とすること。

J学習指導要領について、「公教育水準維持のため、国が定める教育課程の大綱的な基準 であり又文部大臣によって告示されるもので、法規としての性格をもつ」という回答を 昨年度の私たちの要求に対して回答していますが、「告示」だから「法規としての性格 」ということは無理があり、戦後教育の地方分権化の精神に反し、戦前の中央集権の教 育を志向させる過ちがあります。学習指導要領は大綱的な基準であり、各学校の教育課 程作成の資料として扱うべきで、学校外からの政治権力の介入を許さないこと。「日の 丸・君が代」はあくまでも各学校の自主的な判断に任せること。

K「日の丸・君が代」の実施状況の調査をしないこと。

L学習指導要領の変更に伴う各学校が教育課程を作成するにあたって、地域に開かれた学 校づくりをめざし、教育の条理に基づいた教職員の自由で柔軟な考え方を尊重し、学習 指導要領や「新よこはま教育プラン」などで、形式的な枠にはめないこと。

M出張旅費の増額を県が措置するように、強く要求すること。

N学校としての研修、または、資料収集のために教職員が活動できるように、横浜市とし て各学校単位に学校裁量で支出できる予算を研修活動費を予算化をすること。

O児童・生徒の日常生活にかかわる「きまり」「校則」について、「子どもの権利条約」 の観点から総点検し、その改変に取り組むように、教職員に呼びかけること。その場合 子どもたちの意見を取り入れる道筋を考えることを指摘すること。

5)子どもたちに『最善の利益』をもたらす施策をとること。
そのC小学校給食の充実と中学校給食の直営自校方式で実現させること。

@学校栄養職員を他市町村と同様に市費職員を含め、各校に1名ずつ配置すること。

A現在実施されている小学校給食の安全の確保と内容の充実のために、調理員を正規職員 で、100食を基準に多くて120食に1人の調理員を配置すること。

B学校給食は、単に栄養価のある昼食の提供にあるのではなく、文化の問題として、給食 の献立はもちろんのこと、食事作法、雰囲気などあたたかい友達関係のもとで、みんな で食事をするということから、ランチルームなどの条件をつくること。

C学校給食法の趣旨を積極的に受けとめ、中学校給食実現のために、「中学校給食実現プ ロジクトチーム(仮称)」を教育委員会内につくり、直営自校方式による完全学校給食 を中学校で実現するよに努力すること。

D中学校の現場ではたまたま弁当を持ってこられない生徒ではなく、常時持ってこられな い生徒たちのために、食事における差別をなくし、平等な関係のなかで生徒たちがすご せるように、日夜努力しています。食事の問題は、人と人との信頼関係を回復し、「い じめ」などをなくす大切な感情教育なので、市教委としてそのための努力は当然のこと で、そのため、試行的にもできるところから実現させることを要求するものです。少な くとも牛乳給食は、県内他市町村なみに横浜市でも即時実施し、神奈川県の中学校給食 の実施率を100%とすること。

E現在、中学校にパンの自販機をおいてあるところは、教育の問題として理解納得できる ものではないので、早急に撤去すること。どうしても弁当を持ってこられない生徒のた めには、当面の問題として、教育的な配慮によりパンや弁当の自販機以外の方法を各校 ごとに工夫し、業者と相談することなども含め、遺漏ないようにすること。そのような 学校には期間を決めて、完全学校給食の実施に踏み切ること。

F給食室の改善にとりくみ、ドライシステム方式に切り替えているようですが、そのテン ポをあげ、各校の改善予定年度について通知すること。また、エアコンを設置し、調理 員の健康を守ること。

G二階以上の各教室への配膳の安全を確保するため、ワゴンを使用し、全校にリフトをつ けること。特に、校舎改築にあたってはリフトを必ず設置すること。

H給食会による一括購入方式を再検討し、その利用については部分利用も含め、各校の主 体性にまかせ、各校ごとの食材の購入を認めること。そのために学校栄養職員を各校に 配置することを急ぐこと。

I食材の運搬費を給食費に含めて保護者負担としているため、横浜の学校給食の食材費は 他都市に比較して肉類を中心に異常に高くなっています。その解決のためにも、運搬費 のかからない食材を地域商店から購入し、内容を豊にしようというのは、保護者の当然 の要求です。したがって、地域商店からの食材の購入を認め、また、一括購入では、保 護者負担の給食費をすべて食材費にまわすように、運搬費等は、公費負担とすること。6)

6)子どもたちに『最善の利益』をもたらす施策をとること。

その5 子どもたちの放課後を豊かな生活にするため他の部局とも協力すること。

@教委として、子どもたちの放課後の生活まで責任をもって、文化的施設、運動的施設 を各所に設置し、子どもたちが、いつでも楽しく遊べるようにすること。

A子どもたちが専門に使用できる児童館を建設すること。そこに専門の指導員を配置し、 学童保育所も併設すること。市当局は、児童館にかわるものとして地区センターをあげ ていますが、実際には、幼児をつれた母親たちさえ、まわりの利用者を気兼ねして大き な声を出すことや育児体操も十分にできず、まして小学生になると読書以外はほとんど 使えないのが現実であり、「地区センターが利用できる」という市当局の毎年の回答は 責任のがれの、現実に即さない回答です。現実をよく調査して、子どもたち専用の児童 館の建設を急ぐべきです。

B現在、小学生のために市民局の扱いの「学童保育所」と市教委の扱いの「はまっ子ふれ あいスクール」と同傾向の二つがあり、学童保育所は施設の確保に苦労している一方、 後からできた「はまっ子ふれあいスクール」は学校を使用しています。これは、不公平 不平等につながるので、開かれた学校の立場からも、学童保育所にも学校施設の使用を 進めたり、敷地内に学童保育所を新設したりなどして、子どもの生活を保障すること。

C障害児の豊かな放課後を保障するため、学童保育所でも「はまっ子あれあいスクール」 でも障害児を受け入れているので、その場合は介助のための人的配置を保障すること。 また、地区センターの安全利用のために、その指導にあたる人的配置を検討すること。

D障害の重い子どもの放課後を保障するための施設・設備・人的配置等を公的に保障する こと。

E登下校中の災害に際して障害児が安全に避難できるように対策を講じること。

F難所での障害児とその家族が安心して避難生活が送れるような対策を講じること。

G夏期休業中のプールの開放は中学校で行っているが、プールが深いので、低学年等には 不適なので、小学校のプールも開放し、低学年の児童の期待に応えること。

7)教職員が健康で生き生きと教育活動に専念できるように条件を整備すること。
T)教職員の賃金勤務時間等の問題

@臨時的任用職員(臨任職員)や非常勤講師の賃金等、労働条件を改善していくこと。正 規職員は原則として1日づけ採用のため、途中採用の多い臨任職員や非常勤講師は、通 勤手当などが支給されず、自費で通勤するという不利益をうけている場合があるので、 実質勤務日で計算し、通勤手当等を全額支給し、その不利益をなくすこと。

A採用試験が毎年7月半ばのため、学期末の成績処理の時期と重なり、現職の臨任職員や 非常勤講師はまじめに教育活動に取り組んでいて、受験のための準備もなく受験するよ うになり、不利になっていることが多いと考えられます。臨任職員や非常勤講師で正規 採用を希望する人については、地公法22条6項に違反しない方法で勤務実績が反映す ることなどの工夫すること。

B教職員の勤務時間は、「教職員の労働条件であると同時に子どもたちにとっての教育条 件である」という立場に立って、今回の勤務時間の規程は撤回すること。

C4教職員には、教材研究や授業に必要な準備のために膨大な時間が必要であり、その時間 は本来、勤務時間内に確保すべきです。今回の勤務時間に関する規程では、これらの教 職員の本来確保されるべき時間がないので、横浜市教育委員会は、教職員に教材研究等 の時間を確保できるように配慮すること。

D教職員の勤務時間は長時間連続勤務であり、休憩・休息時間を保障するできないことを 認識し、「規程」の撤廃を前提に、勤務時間に柔軟性をもたせること。

E今回の問題は、一部横浜市会議員の発言から始まっていますが、これからもあり得るこ の種の発言については、教育の条理に従って市教委は責任をもって説得に努めること。

F測定可能な超過勤務に対しては、労働基準法36、37条の適用を復活させ、時間外手 当の支給をすること。法的に不可能な場合は、別途支給できる方法を検討すること。
G教職員の休日にあたる土曜(午後・第2・4土)、日曜、祝日の部活動については、社 会的妥当な金額を市費で支給すること。当面、公式戦等の引率には、少なくとも1時間 につき1000円の謝金を支給すること。

H修学旅行など宿泊行事の付き添いは、全日勤務になるので、社会的に妥当な謝金を市費 で支給する方法を検討すること。

I宿泊行事には、子どもたちの健康・安全のために、必ず市費による看護婦を派遣するこ と。その看護婦の賃金は自然教室の看護婦の手当と同額とすること。

J修学旅行など宿泊行事に参加の教職員の回復措置を規定に従い、最大限にとれるように 管理職に徹底すること。

K小学校の宿泊行事には、教職員数の不足から他学年から応援の教職員が参加することが 常態となっています。そのため応援教職員の学級が結果的に自習時間が多くなったり、 教職員が回復措置をとらずに良心的に自習時間を少なくしようとしたりしています。こ のように子ども・教職員に負担をかけないように、行事に指導員をつけるか、応援教職 員の学級の自習時間をなくすために非常勤講師をつけるか、市教委の責任で解決するよ うに努力すること。

U)「子どもたちを主人公に!」のための人事の民主化を。

@毎年数千人の教職員の異動人事があるということは異常な状態と考えられます。異動さ せれば学校が活性化するという単純な考え方を排して、教職員が十分に責任のある教育 活動ができように、この期限を廃止していくべきだと考えます。「希望と承諾」の原則 の上に立ち、一校の在任期間の制限を廃止していくことを前提に、少なくとも、以前の ように15年までに延長すべきです。また、本人の希望により学区内・同区内異動を認 めること。現在のいくつかの学校の荒れの責任の一つはこうした人事に問題があり、行 政側に責任があるといって過言でありません。「いじめ」や不登校、「新たな荒れ」問 題が、このような多数の異動によって学校に落ち着かない情況を毎年つくりだしている ことから起きると考えられます。つまり、1校の在任期間を10年を最高にするとして いるため、平均6〜7年で異動するということになり、横浜市の教職員は4年間でほぼ 全員が異動するという状況をつくりだしているからです。

A校長の在任期間も非常に短く、3年以下になっています。教育は、命令で行なわれるも のではなく、教職員が自由で自主的な全人格的な判断に基づいて実践されるものです。 そのため、校長と教職員が対等な立場で協同して学校運営に当たっていくことが大切で す。その場合、校長の位置は重要です。学校に密着した学校づくりをするために、校長 の在任期間を長くし、教職員と協同していけるようにすること。

B各校での研修のための予算を位置づけ、各校に学校裁量で支出できる研修活動費(研修 会講師料・資料収集等旅費等)を配当し、有効な研修ができるようにすること。

C異動人事に当たっては、希望と承諾の原則を尊重し、通勤距離60分以内を厳守し、そ の他保育等について配慮すること。

D異動については、教職員が次年度の準備ができるように、第一次紹介を2月初旬に行い 3月上旬には原則的にすべてを終了させることを条件として実施すること。

E現在の異動方法であっても、長期在職でも、54歳以上の教職員は異動を強要されるこ とがないこととすること。

F養護学校の教職員の場合、転任希望カードへの希望記入は3校までとすること。

G管理職の登用に当たっては、「人格、識見、管理能力を考慮して」と、市教委は回答し ていますが、現実にはこれに反する管理職が多数います。各学校の中心となって、教職 員・保護者市民と協同でき、納得がえられるように、常に教育活動を共にしている教職 員の意見が校長任用に反映させる手立てを図り、情実の入りこむことのないようにする こと。また、現行の管理職登用基準を全教職員に配布し、管理職のありようを教職員全 員で検討することができるようにすること。

H現在の副校長の勤務実態は午前7時前後から午後7時以上というのが常態という長時間 勤務になっています。出張の多い校長の職務を代行していることもあり、その無権利状 態は甚だしいものがあります。このような無権利では、教職員・子どもの権利について の意識が弱まります。むしろ校長が、出張を極力少なくし校長としての本務を遂行し、 副校長の仕事の軽減をはかり、副校長は、授業をもつなどして子どもたちとの関係を深 め、教育的力量・識見を発揮して、校長とともに教職員の連帯・団結に寄与し、学校づ くりの中心として各校の教育の向上にはかるようにすべきです。その立場から副校長の 勤務時間の短縮をはかること。

I一般教職員の日常の教育活動への努力を認め、定年退職に当たって、昇任退職制度を設 けることを検討すること。

J退職者に対する、現在行っている再就職の紹介等は、退職者全員に平等に知らせ、その 生活の保障をすること。

K年金支給年齢の引き上げに伴い、退職者の退職後の生活を守るために、教職員への再雇 用制度を新設すること。その制度は、市教委として退職者を65歳を限度に非常勤講師 として採用し、各学校に1名以上を必ず配置するものです。その職務は各学校の要請に より、教科指導、図書館指導、授業準備作業などを行うようにすること。

L現在、退職辞令を全員に直接渡す方式をとっていますが、「授与」として、上から下に 恵み与えるという様子が強くて、市職員が退職者の個人名を呼び捨てで読み上げていま す。これを改め、敬称「さん」をつけること。現在、学校における卒業式において、人 権の尊重の立場から「卒業証書授与式」という考えではなく、最後の授業の卒業式とし て卒業生を讃えて「さん」づけで読み上げるような学校が増加しています。この退職辞 令伝達式は4年前からはじめましたが、当時の教育長の太田氏が退職者への感謝の気持 ちを表わすために実施することになつたことを考慮して、「さん」づけを次年度には必 ず実施すること。

V)教職員が健康で元気に教育活動に参加できるように、教職員の健康と安全を守ること。

@横浜市教育委員会は、教職員の健康と安全を守る立場から、労働安全衛生法に基づいた 要綱をつくりました。それを実のあるものとするために、各学校における衛生委員会の 活動が期待されます。衛生委員会の望ましい活動のために、だれもが衛生管理者になれ るように、その資格をとれるための研修講座を設けること。

A労働安全衛生法に基づいて、各校衛生委員会に産業医を配置すること。

B労働安全衛生法に基づいた教職員の健康管理の充実のために、当面、教職員の一日検診 を30歳から毎年受けられるように見直しをすること。また、その検診項目に、超音波 による検査、腰痛、更年期障害、嗄声の検査などを加えて、その充実をはかること。女 子職員には子宮体ガンの検診を加えること。

C人間ドックを希望者全員が受けられるように、公立学校共済組合神奈川県支部に教職員 の健康を守るために強力に要請すること。あわせて、補助金の拡大をはかること

D妊娠時授業軽減措置の代替を対象者1名につき1名を配置すること。盲・聾・養護学校 ・障害児学級については、その職務の実態に応じた時間数を拡大すること。県が措置す るまでの間、市の責任で配置すること。

E厚生活動は、本来雇用者責任でなされるべですが、それがあいまいにされています。そ の責任において教職員の希望を調査してその充実をはかること。

F障害児教育に携わる全教職員に腰痛検査を適用すること。

G横浜市の責任で視覚障害者をヘルスキーパーとして雇用し、腰痛予防のために配置し、 一般教職員、障害児学校・障害児学級担任、給食調理員などが福利厚生として利用でき るように巡回すること。

H永年勤続者のリフレッシュ休暇について、永年勤続者職免に加えて、県の「リフレッシ ュ休暇実施要領準則」を適用させること。また、必ず代替者を配置し、安心してリフレ ッシュできるようにすること。取得期間を1年間とし、余裕をもってとれるように至急 改善すること。

I.永年勤続者に対する記念品は、各自が将来にわたって記念として維持できるように、記 念品購入代金の金額を引き上げ、選択できる品数を増やすこと。

W)人権と生き生きした教育活動を保障するために、管理主義的な教職員管理をやめること。

@教職員の管理体制につながる学校管理規則を撤廃すること。

A勤務評定は、管理主義に基づくものであり、教職員の創造的な活動を期待する学校教育 活動には不適なものなので、廃止すること。国連の「子どもの権利委員会」の子どもの 権利条約にかかわる勧告の大事な一つは、競争主義教育・管理主義教育の改善であるの で、勤務評定は教職員をこの競争主義教育、管理主義教育にかりたてることにつながる ことなので、直ちに廃棄すること。

B教職員の啓発は職場の民主化の中で、相互の自由な討議によってなされるべきであり、 勤務評定に各個人が自己啓発などを内密に書き、校長が一対一での指導を最重点にする ことは、各職場の連帯と共同の感情を否定することにつながり、上意下達の教育を志向 することとなり、学校教育に大きなマイナス条件をつくりだすので、これから実施しよ うとする勤務評定は破棄すること。

8)早急に改善すべき各学校の個別的な要求
@急速に児童数が増加し、保護者・地域住民も要求している都筑区の川和東小学校の方面 校の開設を急ぐこと。また、茅ケ崎中学校の方面校の開設の計画を公表すること。あわ せて、港北ニュータウンの開発に伴って全体的に児童・生徒増の著しい都筑区全体につ いての新設校の計画を策定し、公表すること。

A金沢区の並木中学校の水道蛇口の箇所を増やすこと。生徒数に見合う数はあるといわれ ているが、位置に偏りがあり、利用しにくいところにあるので、生徒たちの生活場面を 考慮して、利用しやすいところに蛇口を設けること。


市教委の回答は、しばらくお待ち下さい


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