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習熟度別学級編制をめぐっての質問と答弁
 
       2001年3月27日参議院文教科学委員会

全国的な30人以下学級の実現の要求を受けて、野党4会派が提出した「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律案」に関連しての、日本共産党参議院議員畑野君枝さんの質問内容です。
政府は、少人数学級編制に背を向けて、国民の要求を拒否しました。
結果的には、野党案は否決され、2001年度から「少人数授業」のための教員配置ということになりましたので、能力別授業形態になる可能性があります。そこで、畑野議員は、文部省に「習熟度」であって、「能力別」ではないと明言させたという内容です。

リンク 詳しくは国会会議録検索システムへ

http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KOKUMIN/www_search?SESSION=25644&EXEID=32&RESID=1&MSIE3=0&MACIEJAV=0&MACIE=1011793858



○畑野君枝君 次に、習熟度別学級編制について伺います。
 この点につきましては、本当に教育効果があるのかという問題点など、文部科学省と四会派提出者に伺います。
 まず、文部科学省に伺いますが、習熟度別学級編制は本当に教育効果があるというふうに認識されているのか、伺います。
○政府参考人(矢野重典君) 習熟度別の指導につきましては、平成十年七月の教育課程審議会、これは教育の専門家から成る審議会でございますけれども、そこの答申におきましても、児童生徒の発達段階等も考慮し、学習内容の理解や習熟度の程度に応じ、弾力的に学習集団を編制するなどの工夫改善を一層進める必要がある、こういう旨の提言を受けているところでございます。
 また、現在、御案内のように、習熟度別指導は全国で行われているわけでございまして、国の教育課程研究指定校における研究におきましても、習熟度の程度に応じた指導を行う中で、例えば基礎基本に重点を置いた指導により理解が深まり、問題を解く姿勢がより意欲的になるなどの、そういう意味でのさまざまな実践的な研究成果が報告をされているところでございます。
○畑野君枝君 この問題について、同じく四会派提出者に伺います

○阿部幸代君 習熟度別学級編制について、本当に教育効果があるのかという質問だったと思うんですが、習熟度別授業ということについて言えば、児童生徒の理解度に応じてその理解を助け、伸ばすために個別の指導を行うという意味であるならば、発達段階、学年段階、教科内容にもよると思いますが、これは全面的に否定するものではありません。
 しかし、政府が進めようとする習熟度別授業というのは、行き過ぎた平等主義を廃止するという言い方で、結局いわゆるできる子といわゆるできない子を振り分けて行う能力別編制授業になって、エリート教育の名のもと、いわゆるできる子に力点を置いたものになってしまうのではないかと危惧をするわけです。そして、ふるい分けによる競争教育を激化させるのではないかと、このことを大変危惧いたします。
 私も教師をしてきたんですけれども、授業というのは、教師の指導のもとで、教師と子供、それから子供たち同士がいわば探求をし、創造をする営みそのものです。いろんな子供にめぐり会ってきましたが、例えば社会科の好きな子供というのは、国語では余り字を覚えないんですけれども、国語でまだ習っていないような酪農とか農業とか難しい字が書けてしまうとか、こういう子もいましたね。それから、家で商売をやっているおうちの子は、多分お父さん、お母さんの金銭上の苦労をよく知っているんでしょう、算数、数学が非常に強いんです。こういう子たちはとても敬愛の目で愛されるんです。
 それから、授業でいえばこういうこともありました。本当に時間をかけて準備をした酸素と二酸化炭素の重さ比べでしたけれども、全部わかったのかなと思ったら、一人だけわからないと手を挙げるんです。でも、そういうときにやっぱりみんなが心配しますね。授業が終わってからやっぱり集まってくるんです。その子と私がいるとみんなが集まってきて、ああでもない、こうでもないという教えっこが始まります。
 つまり、学校のこういう授業というのは、子供の生活とか人格面とか、あるいは理解の仕方の違いそのものの存在が本当に意義があるんだと思うんです。習熟度別学級編制の場合、こうした子供の生活や人格面、あるいは理解の仕方の違いが授業や学習に持つ意義を後景に追いやってしまうのではないかと思うんです。それで本当に探求とか創造性に満ちた授業や学習ができるのか疑問です。
 私は、結局、一方通行の一斉授業が一番やりやすいのが習熟度別学級編制なのではないかというふうに思います。子供の心が傷つくのはもちろん、期待される効果も上がらないのではないかと考えます。むしろ、いわば習熟度別、能力別を徹底したとも言えるいわゆる受験勉強が子供の学力形成に弊害をもたらしている現実を直視すれば、それを助長するようなことはやめるべきだというふうに思います。
○畑野君枝君 今、阿部議員から、政府の進めようとする習熟度別授業というのは結局できる子とできない子に振り分けて行う能力別編制授業ではないか、こういう指摘がございました。
 私は、国会図書館にお願いして、「中学校における習熟度別学習指導の事例」というのを調べていただいたんですが、唯一出てきたのがこの資料なんです。「中京大学教養論叢」という、これ一つなんです。
 そこでは、「かつて、中学校では第一次ベビーブームのころに主要教科毎、または全教科通じて固定的なクラス編成を行なう、いわゆる能力別指導が広く行われた。しかし、そこでの教育成果は総じて芳しいものではなく、実践の現場では様々な教育上の反省をしたといわれる。」というふうに指摘をしているんです。
 それから、「一方、習熟度別学習指導の導入そのものの効果は不明確である。」というふうにも言われていますし、「特に、低学力の者のみのグループではグループ内の学力的資源の少なさが、学習環境を貧弱化させているという資料は多い。」。つまり、いわゆる低学力の子は、もうどんどんわかっている子がリードするという状況がないので貧弱化していると、こういう指摘もあるわけですね。
 きのう私は本会議でロンドン大学の調査を御紹介もさせていただいたわけなんですね。これがインターネットでもわかるインディペンデントに載った記事でございます。
 例えば、そこでは、「能力別で最上位の学級では授業の進度が速すぎ、逆に最下位の学級では遅すぎて効果が上がっていない」、「最上位の学級の女子生徒は、ほぼ全員が下の学級に移ることを希望。男子生徒もほとんどが授業に不満だったが、男子は見えを優先して下位の学級に移りたがらないという。最下位の学級では教師が頻繁に代わる欠点も見られた。」ということで、能力別学級では個々の生徒を教師が見ないとして、「数学教育が低調な最大の原因は能力別授業にある」と。イギリスではちなみに「中等学校は、数学で八割近く、理科や外国語で六割近くが能力別の授業を行っている。」というふうに報道しているわけなんですね。
 これだけ指摘され批判されている。こういう能力別授業について、政府はとらないというふうに明言すべきだと思うんです。
 法案第七条の二項では、「少数の児童若しくは生徒により構成される集団を単位として指導が行われる場合」としか書いてないんです。ですから、私が最初に申し上げたように、二十人授業等の少人数授業は、能力別との批判の多いそうした能力別授業はとらないと明言すべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(町村信孝君) 委員は今巧みに習熟度別と能力別というのをどこかで言葉をくっと変えて議論を変えておられるんですね。
 私どもは、今回、習熟度別学習、個別指導を初めとして、個に応じた少人数の指導を可能にして、基礎学力の向上ときめ細かな学習指導の充実に努めてまいりたいと、こういう考え方で、昨日の本会議でも畑野議員から御質問がありましたのでお答えをしたとおりでございますけれども、今、委員が言われるようなとにかく平等だと、差をつけてはいけない、そういう行き過ぎた結果の平等論というのがいかばかりか伸びる子供の芽を摘んできたか。また、わからない、ついていけない子供たちも一斉に授業をやるものだから置いていかれるという、伸びる子にとってもよくないし、また追いついていくのが難しい子供たちにとっても今までのやり方が妨げになるというようなことで、どうぞひとつ共産党流の、どういうんでしょうか、悪平等というのは私は一刻も早くこの教育界から取り除いていくということが非常に重要だと、こう考えているわけであります。
 ちなみに、これは平成十三年三月十三日、新しいこれは朝日小学生新聞、これを見ますと、テストで自分の弱点を見きわめて算数がよくわかって楽しいと、これは東京都荒川区の峡田小学校の習熟度別授業。「授業がわからない、というのはつらいこと。荒川区の子には、最低でも基礎学力がきちんとついているようにしたいのです」と、こういう荒川区の指導室長さんのコメントがついておりまして、実際にやってきた結果などがかなり詳しく出ております。
 どうぞ、一方的にだめだった、だめだったという資料ばかり述べて、だからだめなんだという単純な結論を出さないようにしていただきたいし、どうぞひとつ子供たちのためにとって一体何がいいのかということを中心にお考えをいただくようにお願いをいたします。
○畑野君枝君 きちっと答えていただきたいんですよ。能力別授業というのと習熟度別授業というのは私は違って言っております。だから、あなたたちが言う習熟度別というのは能力別授業ではないとはっきり言っていただければいいんです。
○国務大臣(町村信孝君) 一度として私どもは能力別と言ったことはございませんので、どうぞお間違えのないようにしていただきたい。
○委員長(市川一朗君) 畑野君枝君、そろそろまとめてください。
○畑野君枝君 能力別授業ではないというふうに明言されたということを御確認させていただいて、時間が参りましたので、私の質問を終わります。


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