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              2002年9月14日 県教職員連絡協議会学習交流集会資料
 新勤評の背景 〜学校・子どもたちをめぐる情勢〜
 
◆支配勢力の攻撃の特徴
  1995.7の日経連報告『新時代の「日本的経営」』に基づいて
    バブル崩壊後の日本経済の低迷を打破し、21世紀の経済国際大競争時代に
   勝ち抜くため企業リストラを以下のようにすすめてきている。
 
 
  ◆総人件費の抑制 (リストラ・低賃金・福利厚生費の切り詰め)
   団塊の世代の高賃金で企業の競争力が低下していることに焦点をあて
    ・能力主義賃金の導入(年功序列賃金・生活給という発想は捨てる)
     人事考課を導入(客観的でないものも評価し、低賃金を可能に)
    ・ITの導入で、職人的な技術者やメンテナンスや福利厚生担当者などを
     「余剰」従業員としてリストラする。

・公務員もリストラ・賃下げの対象
 2002.8・8 人事院が史上初の公務員賃金のマイナス勧告
   〜平均年収で2.3%/15万円のマイナス〜
   逆較差(△2.03%)(7770円)を是正するため
   月例給引下げ(俸給表の改定) 40歳で月7700円程度(教三)
   扶養手当の引下げ 配偶者手当月額16000円→14000円
     (子等は3人目以降の支給月額は3000円→5000円)
  減額分は4月に遡って12月のボーナスで調整(4月に遡及して減額)
   期末・勤勉手当の引下げ(0.05ヵ月)〜4年連続〜
   3月期のボーナスを廃止し、6月期と12月期に再配分
   併せて、期末手当と勤勉手当の割合を改定(成績主義賃金に連結)
  (公務の活力を維持するため、実績を上げた職員に報いるよう、特別
   昇給や勤勉手当を活用する必要)








 

 

  6月期

  12月期

  3月期








 

本年度期末手当
  勤勉手当

1.45月(支給済み)
0.6月(支給済み)

1.85月(現行1.55月)
0.55月(改定なし)

0.2月(現行0.55月)
     

15年度期末手当
  勤勉手当
 

1.55月
0.7月
 

1.7月
0.7月
 

  廃止
     
 
 
    公務員賃金の引下げにより、民間との賃下げ競争がはじまる。
 
  ◆雇用ポートフォリオ(今までの正社員を中心とした終身雇用制をやめ
 
    必要な人材を必要なときに必要な数だけ雇用するシステムをつくる)
   @長期蓄積能力活用型グループ(少数のスーパーエリート・終身雇用)
   A高度専門能力活用型グループ(スペシャリスト・短期雇用契約社員)
   B雇用柔軟型グループ(圧倒的多くの、マニュアルを理解し、その通り仕事をす
              る実直な流動的労働者群。不安定雇用)
    ABのために「人材派遣業」を認可、「労基法」を改悪して、雇用の流動化と
    低賃金雇用を可能にする。(企業の社会保険などの福祉のための費用も縮減)
 
   以上を支える「哲学」=新自由主義 「福祉国家論」「修正資本主義」を否定し
    自由競争至上主義、市場原理至上主義の立場(競争で勝ったものは正しい)
    すでにイギリスやニュージーランドなどで導入して失敗している。
   ◆キーワードは資本家に都合の良い「規制緩和」(何でもあり)
   ・市場原理 (優勝劣敗は当然・国家は市場に介入しない。勝ち組・負け組)
   ・民営化 ・自己選択、自己責任、受益者負担 (国家・社会は助けない)
   竹中経済担当相「みんなで貧しくなるのはイヤダ。一握りの成功者に引張って
           いってもらう。」(潤った上層階層のおこぼれを庶民が享受
           する。小さくなったパイを貧乏人にはあげず、金持ちの取り
           分を多くする。)  階層分化は当たり前
      ◆年金医療改悪、税制改悪(金持ち優遇・国民負担の増大)
 
   ※以上のシステムを作り上げる土台としての「教育改革」の基本的思想
   @前教育課程審議会長の三浦朱門氏の発言
     「蛙の子は蛙」
     「今までの教育は、落ちこぼれ(非才・無才)を底上げすることに力を注ぎ
      エリート養成を怠ってきた。」
     「ゆとり教育での学力低下は望むところ」
     「これからの教育は、エリート養成を中心に行う。落ちこぼれは実直な精神
      だけを育て、あとは放任する」
   A教育改革国民会議座長江崎玲於奈氏の発言
     「遺伝的な資質と、生まれた後の環境や教育とでは、人間にとってどちらが
      重要か。優性学者はネイチャー(天性)だと言い、社会学者はノーチャー
     (育成)を重視したがる。共産主義者も後者で、だから戦後の学校は平等と
      いうコンセプトを追い求めていたわけだけれど、僕は遺伝だと思っていま
      す。これだけ科学技術にお金を投じてきたにもかかわらず、ノーベル賞を
      獲った日本人は私を含めてたった5人しかいない。過去のやり方がおかし
      かった証拠ですよ。」「個人一人一人の違いを認める教育とは、つまり
      (遺伝子診断に基づく教育)そういうことだ」
  ◆文部科学省の言う現在の「教育改革」の視点
   ★国家主義の強化+能力主義の強化・教育の自由化
   @「心の教育の充実」
   A「個性を伸ばし多様な選択ができる学校制度の実現」
     (単線型学校制度を否定し、“行き過ぎた平等主義や画一性”を是正する)
   B「現場の自主性を尊重した学校づくりの推進」
   C「大学改革と研究新興の推進」(2004年国立大学独立行政法人化)
   <具体的施策>
   「基本的人権」を保障する「教育の機会平等」の原則をなしくずしにしていく。
    ・ゆとり教育(総合的学習の時間、選択教科の拡大、習熟度別授業)
    ・「学びのすすめ」(補習奨励・学力低下の批判をかわす)
    ・日の丸・君が代の強制、道徳教育の推進、心のノート配布・愛国心の育成
    ・公立小中学校の通学区域の弾力化(早期選別)
    ・中高一貫教育の部分的導入の推進(全国で500校設置予定)
     さらに、学力向上フロンティア事業、スーパーサイエンスハイスクールなど
     でエリート養成をはかる。(実質的な複線型教育体系で階層分化)
    ・大学入学の際の飛び級制度
    ・校長権限の強化、特色ある学校づくり
    ・高校の学区制の廃止ないし大幅な緩和 低学力生徒切り捨ての高校統廃合
    ・民間人校長の登用(経営の悪化した大企業の部長クラスが多い)
      東京都立高校 商工会議所に推薦依頼 日立と日産の部長経験者が応募
      広島県立高校 マツダ自動車出身4人(部長経験者)
      (企業幹部の新たな再就職口となり、会社経営の利潤追求の手法を学校経
       営と教育に持ち込む。競争に打ち勝つための教育に変質させられる)
    ・絶対評価〜指導要領の目標達成をB規準として全国一律の5段階評定を導入
    (学校裁量や教師の裁量は基本的に認めず、地域差・学校差が歴然とする評価
    ・評定システムを進めようとしている。現在統計を取りながら、“甘い”評価
     評定をしている学校や教師を攻撃し、指導要領の縛りを一段と強化する。)
 
  政府・財界の「教育改革」の手法
    長年の競争と管理の教育で矛盾を深めた学校教育への批判を逆手にとり
    「教育基本法に基づく人格の完成をめざす民主社会の主権者育成の教育」を
    「教育改革の名で、国家(経済界・支配層)のための人材育成のための教育」
     に変えていく。
    有名私立学校および受験産業が潤うシステム
     公立小中学校が変わっても、就職や大学受験は変わっていない。
     ・企業の正規採用はやはり学歴重視(人事担当は採用責任を問われる)
     ・私立の小中学校は、「学力低下」を招く学習指導要領に従わない。
      (塾で学んで私立中学校・公立中高一貫校へ進学しよう。〜受験産業)
     ・東京都の私学は、受験生に統一テスト受験を義務付ける方向
     ・公立高校の学区が大幅に緩和され、序列がますます明確になる。
     ・県内の私学も今まで公立高校受験にのみ資料とされた5段階評定の一覧
      表を、入試時に提出させる。(今までは、公立高校にのみ提出していた)
      ★結果的に受験競争は激化せざるをえない。
   「教育改革」推進のための教職員の管理統制の強化
    ・教委の指導下の校長の権限強化(日の丸・君が代・指導要領・職員会議)
    ・「不適格教員」の認定と排除
    ・研修権および研修の自由の大幅な侵害
    ・賃金・人事に反映する人事評価(新勤評)の導入で、協力・協業の学校現場
     に差別分断を持ち込む。
 
◆子どもたちの状況   「学校基本調査」から(国は速報値)
 神奈川県の小学生
 ・総数  45万9689人で20年ぶりに増加
  (国は723万9千人で21年連続減少で過去最低。)
 ・不登校1787人、0.39%・256人に一人(前年度1727人、0.38%)
    国2万7千人、0.37%、268人に一人(前年度より百人増加0.5P増)
 
 神奈川県の中学生
 ・総数  23万2360人で前年度より7223人減少
    国は386万3千人で16年連続減少で過去最低。
 ・不登校 7414人、3.20%・31.3人に一人(前年度6962人、2.95%)


 
※10年前の1992年度の不登校者は3040人で1.0%)
※校内暴力も83件で過去5年間で最高・逮捕者38人で前年比35%増)
 
   国は11万2千人、2.90%・34.5人に一人(前年度比4千人増、2.95%)
  不登校は神奈川県でも全国でも過去最悪
 
   神奈川県では高校統廃合と不況のダブルパンチで、県内私立高校への進学者が県
  教委の想定した枠を2650人も下回り、全日制高校の進学率が90%に落ち込み
  ました。特に日産座間工場移転など産業空洞化が進んでいる高校学区では相模原の
  86%、横浜市瀬谷区の88%など落ち込みが激しくなっています。(資料参照)
   さらに、定時制の統廃合も今年スタートしたために、私たちの闘いで公立高校の
  合格枠を急きょ450増やしたにもかかわらず、定時制にも進学できない生徒が出
  てしまいました。(中卒の就職は全県で725人で1人増、0.90%、進学も就
  職もしない「無業者は1189人で1.7%)
 
   また、今年度は2002年4月問題(完全5日制、新教育課程、新教科書、新教
  科時数、総合的学習の時間、絶対評価、学校間競争、人事評価などの管理強化が一
  斉に実施された)が、権力的・制度的に持ち込まれました。そのため、学校は超多
  忙化現象に見舞われました。子どもたちも過密長時間授業で6時間目にはくたびれ
  て授業にならなくなったり、「絶対評価」が導入され、各教科でレポートや作品漬
  けの傾向が顕著になり、3人の生徒が睡眠不足で倒れる中学校も出てきました。
   土曜日の子どもたちの居場所の確保が社会的に保障されないままの完全5日制実
  施で、ゲーム漬け・テレビ漬けなどでさらに生活リズムが崩れ、月曜日に保健室に
  行く子も増えています。
 
◆職場にかけられてきている攻撃
   昨年国民的な反撃で、採択率は0.03%、国公立の全中学校で不採択となった
  扶桑社の中学校歴史教科書が、愛媛県で今年度からの県立ろう・養護学校4校に引
  き続き、県立中高一貫校の3中学校での採択が強行されました。同様に反動勢力の
  に都合がよい人づくりのために「心のノート」を副読本として文部科学省が各学校
  の児童・生徒分を配布し、お上に対する実直な精神や「愛国心」を育成しようとし
  ています。これらは、反動側の並々ならない意欲を示すものであり、決して軽視で
  きません。
   公務員に対する、総人件費抑制と管理統制強化を狙った新勤評=「人事考課」の
  導入は、「指導力不足」教員問題を意図的とからめて、全国の教育現場にハイスピ
  ードで進められています。
   昨年度から東京都で人事評価に関する自己申告票(裏が異動書類)に基づいてA
  〜Eの5段階評定で12ヵ月昇給短縮5%・6ヵ月昇給短縮10%3ヵ月昇給短縮
  10%という賃金差別攻撃が始まりました。
 
 ■神奈川県で現在試行されている人事評価システム=新勤評の主な骨子は以下の通り

@目標管理(学校目標に基づいて・グループ目標・自己目標を自己申告する)
  申告にあたり管理職と話し合いを持つことを義務付け、目標の書き直しや
  年度途中、年度末と3回の面談も義務付けられている。(自己観察書)
A校長と教頭(副校長)が数値式評価・段階評価 (観察指導記録)
 評価の項目は「能力」「意欲」「実績」で絶対評価を基本とした段階的評価
 評価対象は 「教科指導」=「各教科の指導」・「総合的な学習の時間指導」
 <職務全般>「教科外指導」=「道徳」・「特別活動」・「児童・生徒指導」
               「部活動」等
       「学校運営」=「校務分掌」・「学年経営」・「PTA活動」等
B評価結果の全面活用(給与・人事・研修・管理職選考など)
  5段階(S・A・B・C・D)の絶対評価を教委が相対評価に直し
  賃金・処遇(管理職登用、異動人事)にリンクさせる。
 
 (神教組は観察指導記録に「記述式」も導入できたということで、今まで数値式評価
  阻止を組合員に言ってきたにもかかわらず、試行を認めてしまいました。)
 
◆私たちの運動の前進面
  @30人学級をはじめとした教育条件整備3000万署名の運動で大きな成果
    13年間で総計2億9000万筆をこえる3000万署名などの国民的な運
   動と世論を背景に少人数学級を実施する自治体が急速に増えています。山形、
   青森、秋田、福島、埼玉など2002年7月現在22道府県(高校を含め26
   道府県)におよんでいます。少人数学級を求める自治体意見書は、横浜市も含
   めて1690(全自治体の52.3%)に至っています。私学助成も前年度比
   を55億円増を勝ち取り、史上最高額(977.5億円)を予算化させました。
   さらに義務教育国庫負担制度・教科書無償制度の堅持などを勝ち取りました。
  A先の通常国会で有事法制の成立阻止のため、教職員をはじめ多くの労働組合、
   民主団体、市民が共同して継続審議に追い込みました。
  B勤務時間延長問題で川崎市教職員連絡会が大きな成果
   川崎市教職員連絡会の法的根拠を示して、父母・市民との共同の力を背景にし
   た粘り強い取り組みで、休息・休憩を勤務時間の途中に入れる、という教委の
   「通知文」を変更させる画期的な成果を得ています。
  A教職員の人事問題で横浜市では大きく前進
    長年の要求提出や各界連としての交渉の中で、市当局に訴え続けてきた新採
   用者の大幅確保の要求が、今年度831名が採用という成果になりました。
    また、市立の学校で「不連続でも3年間臨任教員として勤務した人は採用試
   験の一次(筆記)試験を免除する」という全国でも稀な成果を上げました。
 
 
「危機こそチャンス」
  今、「憲法の実質改悪である」有事立法の成立や教育基本法の改悪で、日本の
 平和と民主主義が根底から崩されようとしています。
  しかし、教育の分野だけでなく、社会のどの分野でも強者優遇、弱者切り捨て
 の「構造改革」の中で、国民的な規模で怒りや要求が渦巻いています。
  危機的な状況の今こそ、チャンスです。私たちは忙しさに流されることなく、
 攻撃の激しさと大きさにたじろぐことなく、子どもたちの健やかな成長を保障す
 るための一つ一つの課題に対して学習し、宣伝し、仲間を増やしつつ、取り組み
 ましょう。
 

 

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