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障害児学校・個別支援学級はどうなるの!?
 2003.年6月に作成.
Q1 「特殊教育(障害児教育)」が「特別支援教育」に変わるといわれていますが  どういうことですか?
A1 今年3月、文部科学省の調査研究協力者会議が、「今後の特別支援教育のあり方について」(最終報告)を行いました。
 その中で「障害の程度等に応じ特別の場で指導を行う『特殊教育』から障害のある児童生徒等一人一人の教育的ニーズに応じた適切な教育的支援を行う『特別支援教育』への転換を図る」としています。 
 特別支援教育では、これまで障害児教育の対象としてこなかった、LD、ADHD、高機能自閉症などの障害児が通常級に6.3%程度の比率で在籍している可能性があり、その教育的対応が重要な課題であると言明しました。1クラス2,5人、小学校の小規模校なら、1校12〜15人程度、大規模校なら1校50〜60人程度の子ども達が、新たな「特別な教育」の対象者になります。
 多様なニーズに適切に対応する仕組みとして「個別の教育支援計画(個別教育計画)」を一人一人に作り、教育支援を行う人・機関を連絡調整するキーパーソンとして特別支援教育コーディネーターを置く。さらに質の高い教育支援を支える福祉、医療等の関係機関とのネットワークとして、広域特別支援連携協議会を設けるとしています。
Q2 対象者を広げた分、教員は増えるのでしょうか?
A2 人員の配置、施設や設備の整備等については「近年の国・地方公共団体の厳しい財政事情等を踏まえ、、既存の人的・物的資源の配分について見直しを行いつつ、また、地方公共団体においては地域の状況等にも対応して、具体的な条件整備の必要性について検討していくことが必要である。」として国としては新たな人的配置や施設整備の予算化ではなく、これまでの障害児学校・学級の人的・物的資源の再配分「教育リストラによる体制づくり」の方向を強く打ち出しています。
Q3 盲・聾・養護学校はどのようになりますか?
A3 「障害の重複化や多様化等を踏まえ、障害種のとらわれない学校設置を制度上可能にするとともに、支援地域において小・中学校等に対する教育上の支援(教員、保護者に対する相談支援など)をこれまで以上に重視し、地域の特別支援教育センター的役割を担う学校として『特別支援学校(仮称)』の制度に改める」として、障害種別ごとの学校を見直し、人員配置等なしに新たな特別支援教育センター的機能を持たせようとしています。 文科省の指定を受けた養護学校では、地域支援の教員等を捻出するために、大幅に担任を減らした学校システムの研究なども進められています。
Q4 「個別支援学級がなくなる」と聞きましたが、どういうことですか?
A4 「特殊学級や通級による指導の制度を、通常の学級に在籍した上で必要な時間のみ『特別支援教室(仮称)』の場で特別の指導を受けることを可能とする制度に一本化する」としています。これは、次のことを表しています。
○固定式の障害児学級や通級指導教室がなくなる。
○重度・重複障害児を除いて、全ての障害児が通常校の通常級に在籍する。
Q5 盲・聾・養護学校や、個別支援学級・通級指導教室がなくなると、どんな問題 がありますか?
A5 盲・聾・養護学校や個別支援学級は、教科学習の遅れ・困難や障害への対応など通常教育に不足する部分的なニーズを補うだけでなく、一人一人の豊かな成長・発達のために全面的に特別なカリキュラムを必要としてきた子どもたちが学んでいます。子どもたちは障害を持っていても人間として発達する権利を持ち、常に学びの主体者として学習する権利を持っています。
 しかし、特別支援教育では通常学級での生活が主で、特別な指導が必要な時間だけ特別支援教室で受けることが基本になります。対象児も大幅に増えることから、特別支援教室で受けられる指導時間は、子どもによっては大幅に少なくなることが予想され、担当者との信頼関係の構築や、継続的は学習指導、今まで作り上げてきた個別支援級での集団的な取り組みなどが難しくなるなど、教育内容の大きな後退も予想されます。
 また、LDなど新たな障害児教育対象児も含め、多様でたくさんの障害児に対し、一人一人のニーズに応じた教育的対応が、基本的は新たな人的・物的配置がないまま通常学校の教職員にもとめられることになります。これまでの個別支援学級や通級指導教室の教員は、通常級での指導を補う部分的な「特別支援教育」と関係機関や保護者との連絡・調整役としての特別支援教育コーディネーターの役割が期待されることになるでしょう。
 障害児学校の教員は障害児教育に対する多様な専門性を要求され、新たな人員増がない中で教育的機能を削りながら地域のセンターとしての機能が新たに要求されるでしょう。今でさえ教職員が足りないのに、教育的な必要性は脇に追いやられ、大幅な担任数の削減や臨時教職員化が進められることが予想されます。
 このようにあらゆる学校で、大変な教育条件の後退と際限ない教職員の負担強要が予想されます。
 障害児教育のシステム化は、「場の充実か、ニーズに応じた教育か」とい
う対立的にとらえるのではなく、それぞれの場を充実させながら、サービス
の連続体を整備・確立することが必要です。障害児学校も、個別支援学級も
通級指導教室も、通常学級における特別な教育も、それぞれを充実発展させ
ていきましょう。 そのために、障害児教育のリストラにつながる今回の改
変を許さない闘いを組合、保護者、市民とともに進めていきましょう。

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